新築でも、満室にならない賃貸マンションが存在します。
新築なのに、家賃を下げないと決まらない賃貸マンションが存在します。
「住宅として、入居者から求められるニーズ」を見誤ってしまえば、
せっかく建てるマンションは夢の建物ではなく、ただの不良債権となってしまいます。
「ニーズ」と言うと、デザイナーズ物件の様な目を引くものと思いがちです。
都心の一等地においては、その通りでしょう。
しかし、デザイナーズ物件が適している立地は、ごく限られた場所である、
と、当社では考えています。
ニーズの分かり易い例として、単身者用の住戸を考えてみましょう。
一般に言うワンルームです。
10年程度前までは、「水回り3点セット」が当たり前でした。
ユニットバスの中にトイレと洗面台がちょこんと付けられているタイプです。
これは、非常に便利なものでした。
ユニットバスの面積だけでトイレと洗面台の面積を必要とせずに済むので、
16平米程度の住戸面積があれば、洋室6畳の住宅を作る事が出来ました。
昔のワンルームと言えば、こんな感じのユニットバス・ミニキッチンでした。
しかし、誰もがご存知の通り、
今ではこの装備ではまともな値段で貸す事は不可能となっています。
なにが「今求められている物件」なのか?
多くの人はそれを「ニーズ」と呼び、「次のニーズ」を探します。
しかし、そこには答えはありません。
出て来るアイデアは一過性のもので、数年後にすぐ陳腐化するものばかりです。
実は発想が逆なのです。
本当の「ニーズ」は、「住宅として不自由ないこと」なのです。
単身者住宅に住む人も、
ファミリータイプマンションや戸建に住んでいる人と同じ「一人の人間」です。
別の国に住んでいる人でもなければ、別の星の人でもありません。
嫌なものは同じ。
そう考えれば、「設計者が次に何をすれば良いのか」の答えは自ずと出ます。
友人が泊まりに来て、お風呂に入っている時、自分がトイレに入る事は出来ない。
そんな浴室は嫌われます。
キッチンで料理を作って、その場で食べて、その場で寝る。
食寝分離が望ましいのに、調理する場所で寝るなど論外です。
キッチンは1口コンロで、事務所に付いている様な、間に合わせ程度のものしかない。
1部屋しかないのに、その部屋が6畳以下しかない。
そんな部屋に住みたいと思いますか?
<4.容積率の話 6.住戸内の効率化>