賃貸マンションの法律 (第2章)消防設備について

マンションに必要な消防設備

消防法では、建物ごとに、必要とされる消防設備を定めています。
マンションを建てる際に「どんな設備が要求されるのか?」は
建築コストを判断する上で重要な要素です。

消防法の全てを理解する必要はありません。
ポイントだけを
まとめてみましょう。
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例えば、
連結送水管

7階建以上の建物では、
3階から上の各階全てに連結送水管の吐き出し口を設け、
道路面には取り入れ口を設けなければなりません。
この設備は、消防車(ポンプ車)が来た時に、
消防用水を各階に送り届ける為の太い水道管の様な設備です。

設置コストが掛かるだけでなく、新築時、経年時に
特殊作業車を使っての点検が必要となるため、
イニシャル・ランニング共にコストアップになります。

また、各階に付ける吐き出し口は、階段に近い場所に設ける必要があり、
プラン上の制約にもなります。




これが賃貸マンション計画にあたり、どの様な意味を持つのか?

無駄なスペースを計画した為に7階建となったプランと、
必要な設備を奇麗にまとめた6階建のプランでは、
収支に大きく差が出る、という事を意味します。




消防関係では、マンション建築に当たり、もう一つ、重要な規定があります。



延床面積が500mを超えると、自動火災報知機
必要になります。
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この500m
は「法床面積」です。
バルコニーは含みませんが、廊下や階段、エントランスホール等、
住戸でない部分の面積も含まれます。


これは、どの様な意味を持つのか?

例えば、延床面積510m
のマンションの計画があったとします。
その建物は、エントランスホールは広く、階段も余裕のあるサイズ。
もし、そうだとすれば、「なにがなんでも」無駄に広いスペースを見つけ出し、
延床面積を500m
に抑えなければなりません。


たった10mオーバーしているだけで、
100万円単位のイニシャルコスト増、数年おきの消防点検。


収支を考えなければならない賃貸マンションにおいて、
その辺りのコストをシビアにコントロール出来るかどうか、
こんな所にも、設計者の技量が現れます。


床面積を効率的に管理することそれはとても重要な事なのです。


ちなみに、一級建築士であっても「バルコニーには必ず
避難ハッチが必要」
と思っている人がいるのですが、消防法では
その階の収容人数が10人以上の階に必要
と定められています。

つまり、各階5戸や6戸のワンルームマンションでは避難ハッチは
必要ありません。


消防法ではなく、都道府県条例により避難ハッチが必要となる場合もあります。
その場合は「消防設備」ではなく、条例の規定を満たす為に付ける
設備となります。

「消防設備」として求められる基準とは異なる基準となるのですが、
これも、あまり知られてはおらず、その為に過剰なスペース、
無駄な避難通路を設けてしまい、採算を悪化させているケースも
多々見受けられます。


建築基準法だけでなく、消防法、都道府県条例、都市計画法など、
建築士が知っているべき事は多岐に渡ります。
それらの法律は全てを理解して、きちんと守れば十分な安全性が確保されます。
過剰な装備を設ける事は安全性を高める効果ではなく収支計画の悪化に
繋がります。



当社では、それらの全てをお施主様にご説明しながら、
プランのご提案を進めて行きます。
全てを知っているからこそ、出来る提案。
そのご提案は「
これ以上はあり得ない」煮詰め尽くされたプランなのだ、
という事を設計段階において、しっかりと確認して頂きます。