避難設備とは、主に、避難経路となる「階段」「廊下」を意味します。
これらは建築基準法で定められているもので、
都道府県条例により補完されています。
このコンテンツにおいては、建築基準法に基づく規制についてのみの
解説となります。
大都市部などの条例は、これに上乗せ規制を掛けており、
より厳しい規定となっている場合もありますので、ご注意下さい。
ここでは、階段について、どんな規定があるのか。
「階段の数」「階段のサイズ」「縦穴区画をしなければならない階段」
の順にご説明します。(1)階段の数階段は、避難階まで迷わずに下りられる様な階段としなければなりません。
避難階とは道路面と同じ高さにある階の事で、
この階段の事を「直通階段」と呼びます。
建物が6階建以上になると、「2以上の直通階段」が必要とされます。
ただし、この規定には「緩和規定」があり、階段を外階段として
「避難上有効なバルコニー」も設置した場合には、各階床面積200m
2までは
「階段を1つにして良い」ということになっています。
小規模なマンション(各階6戸程度まで)の計画では、
階段を二つ設置する事は非効率となりますので、
6階建以上になる場合には、ほぼ必ず、この緩和規定が利用されます。
世の中に5階建のマンションは数多くありますが、
6階建のマンションはあまりありません。その理由は、この法律の規定だったのです。
他にも、
11階建、14階建が世の中に多いのにも理由があります。
なぜ多い?この階数のマンション建物の高さが31mを超えると、商業地域でも隣地斜線が掛かる為、
建物が不整形になり易くなります。
また、ちょうどその位の高さから巨大な「非常用エレベータ」が必要
となります。
以上の理由によるコストアップを避けるため、
建物は31m以内に抑える事が一般的です。
31mの高さは、
マンションの場合、10階~11階建に相当します。
高さが45mを超えると、構造計算が複雑になり、
建築確認申請も煩雑なものとなり、更にコストアップになります。
この高さで納まるのは丁度14階建。
だから、世の中に15階建のマンションがほとんど無いのに、
14階建は大量に存在します。
これらの理由を知る事は、賃貸マンションの企画時に
簡潔な判断を下す材料にもなります。
家主・地主様にあっては、この様な知識をたくさん付けて理論武装、
そして、無駄な提案を聞く事のない様にして頂きたいと思います。
このサイトのコンテンツを全て読破して下さった方々には、
「昨日今日配属された営業マン」を遥かに上回る知識が備えられる筈です。
(2)階段のサイズ階段の寸法には、「幅、高さ、奥行」があります。
専門用語では、高さの事を「蹴上げ」、
奥行の内、上から見た時に、上の段と「重なっていない部分の長さ」を「踏面」と
呼びます。
※
実際の階段の段板奥行であるDは、法的にはなんの意味も持ちません。階段のサイズも、上階の床面積が200m
2を超えているかどうかで、異なります。
世間一般的には、これを意識せず、
常に同じサイズで階段を設計している設計者が見受けられますが、
エレベータ利用がメインとなる建物において、
階段を大きく作る事は無駄でしかありません。
階段サイズの法規定についても、設計者がお施主様に対して
「必ず説明し、選択して頂く」べき重要な内容ではないかと考えます。
(3)
階段の縦穴区画4階建以上の建物を建てるとき、外階段の場合には気にしなくて良いのですが、
内階段を計画する際には、「縦穴区画」を考慮しなくてはなりません。
※
着色部分が階段火災時に、階段を通じて、下の階で発生した煙が上階に蔓延しない様に、
階段室とそれ以外の部分を区画します。
煙は垂直方向では、水平方向に比べて遥かに早く動きます。
区画するという事は、耐火構造の壁で区画するだけでなく、
階段室からの出入口の扉は「煙を遮る構造の防火戸(遮煙防火戸)」とします。
階段室を区画するということは、踊り場までも含めて囲む事になり、
空間は多めに使用する事になります。
だから、マンションでは防火区画が不要な外階段が多いのです。
しかし、この規定でも、小規模な建物(各階4戸程度までのマンション)では、
区画不要とされるケースがあります。
その場合には、内階段のメリットが最大限に活かされる事となり、
外階段では作り得なかったプランを実現出来る場合があります。
当社では、内階段を採用し、外階段プランより遥かに収支を改善したプランも、
これまでいくつも実現しています。
内階段は屋内に作られるため、外階段・外廊下に比べ、
共用部分が劣化しにくく、維持費の面でも有利になります。
また、吹きさらしでない為、高級なイメージも造り易い事がメリットとなります。