木造アパートを計画する際の注意点

 賃貸の募集をする際に、どうしても、「鉄骨造」「鉄筋コンクリート造」
などと書いてある物件に比べて不利になります。

 そのデメリットを補うために、以下の点に配慮したご提案をしています。

1.同じ賃料であれば、他構造の物件と比べ、洋室が広く、設備が良いもの
  であること。

  工事単価が安いので、住戸全体や部屋を大きくする事は十分可能です。
  周囲の物件よりも、一回り大きい部屋を計画します。
  設備についても、アパートには普通付かない様なオートロックやモニタ
  付インタホンなど、マンション並の装備を付ける様にします。

2.木造でしか出来ないプラスアルファの要素をつける。

  他構造でも技術的には可能でも、付けると無駄が出てしまう装備があり
  ます。一番分かり易い例はロフトです。木造の場合には、ロフトを作る
  ためにそれほど追加のコストは掛かりませんが、入居者募集時には大き
  な武器となりますので、是非計画しておきたいところです。
  建物全体の高さなどとの絡みもあって難しいのですが、出来れば、1階
  にロフトを計画し、どうしても人気のない「1階」の魅力をアップ
  させます。3階には普通に小屋裏にロフトが造れます。
  「エレベータ無しの3階」というマイナス要素もロフトで打ち消します。

3.木造だからといって性能を妥協しない。

  人気のない「木造」ですが、一般の方の認識が間違えている部分が一つ
  あります。木造は鉄筋コンクリート程の性能はありませんが、遮音性に
  おいても、耐火性においても、鉄骨造とは大差ありません。
  軽量鉄骨造は木造の柱を細い鉄骨に代えた様なものですから、耐火性は
  木造よりも劣ります。木造は炭化して構造体自体は火災後も原形を
  とどめますが、軽量鉄骨は溶け落ちてしまいます。いずれにしても、
  躯体を覆う内装材や外装材で防火措置をしている訳で、
木造が火に弱い
  というのは誤解
です。重量鉄骨の場合でも、肉厚の分、軽量鉄骨よりは
  マシなものの、火に強いわけではありません。鉄骨の場合にも木造と
  同じく耐火被覆が必要となります。

  遮音性はどうか。これも、木造が劣る訳ではありません。木造躯体と
  鉄骨躯体。木造はムクの柱であるのに比べ、鉄骨は中が空洞の薄い鉄板
  で柱が造られています。(軽量鉄骨の柱の厚みはたった3〜4ミリ)

  つまり、「木 対 鉄」では、遮音性も躯体以外の性能で決まるのです。
  木造でも鉄骨でも、遮音性の悪い壁で計画すればうるさいし、床も同様
  です。

  だからこそ、木造でも、そこは妥協しません。木造3階建の場合、
  法規制により、戸境壁は十分に壁が厚くなります。問題は上下階の遮音。
  悔しい事に一般的に重量鉄骨造で使われているデッキプレート床と比べる
  と、一般的な木造の床だけでは、遮音性に劣ります。
  そこで、床に関しては様々な方向から、遮音を考える必要があります。
  厚くすればいくらでも遮音出来ますが、その分、天井が低くなる。その
  バランスを考えながら、出来る限りの事をします。

  また、どの構造でも言える事は、上階の排水音に関する配慮。
  これはパイプシャフトの位置で決まる事なので、木造でも、他構造より
  気の効いた設計をする事が可能です。この辺りも積極的に計画する事で
  建物の魅力を限界まで高めて行きます。

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