避難設備とは、主に、避難経路となる「階段」「廊下」を意味します。
これらは建築基準法で定められているもので、
都道府県条例により補完されています。
このコンテンツにおいては、建築基準法に基づく規制についてのみの解説となります。
大都市部などの条例は、これに上乗せ規制を掛けており、
より厳しい規定となっている場合もありますので、ご注意下さい。


ここでは、階段について、どんな規定があるのか。
「階段の数」「階段のサイズ」「縦穴区画をしなければならない階段」の順にご説明します。

(1)階段の数
階段は、避難階まで迷わずに下りられる様な階段としなければなりません。
避難階とは道路面と同じ高さにある階の事で、この階段の事を「直通階段」と呼びます。
建物が6階建以上になると、「2以上の直通階段」が必要とされます。


ただし、この規定には「緩和規定」があり、階段を外階段として
「避難上有効なバルコニー」も設置した場合には、各階床面積200平米までは
「階段を1つにして良い」ということになっています。

小規模なマンション(各階6戸程度まで)の計画では、階段を二つ設置する事は非効率となりますので、
6階建以上になる場合には、ほぼ必ず、この緩和規定が利用されます。


(2)階段のサイズ

階段の寸法には、「幅、高さ、奥行」があります。
専門用語では、高さの事を「蹴上げ」、奥行の内、上から見た時に、
上の段と「重なっていない部分の長さ」を「踏面」と呼びます。

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実際の階段の段板奥行であるDは、法的にはなんの意味も持ちません。

階段のサイズも、上階の床面積が200平米を超えているかどうかで、異なります。
世間一般的には、これを意識せず、常に同じサイズで階段を設計している設計者が見受けられますが、
エレベータ利用がメインとなる建物において、階段を大きく作る事は無駄でしかありません。

階段サイズの法規定についても、設計者がお施主様に対して
「必ず説明し、選択して頂く」べき重要な内容ではないかと考えます。

階段の縦穴区画

4階建以上の建物を建てるとき、外階段の場合には気にしなくて良いのですが、
内階段を計画する際には、「縦穴区画」を考慮しなくてはなりません。


(3)階段の縦穴区画

4階建以上の建物を建てるとき、外階段の場合には気にしなくて良いのですが、
内階段を計画する際には、「縦穴区画」を考慮しなくてはなりません。

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着色部分が階段


火災時に、階段を通じて、下の階で発生した煙が上階に蔓延しない様に、
階段室とそれ以外の部分を区画します。

煙は垂直方向では、水平方向に比べて遥かに早く動きます。
区画するという事は、耐火構造の壁で区画するだけでなく、
階段室からの出入口の扉は「煙を遮る構造の防火戸(遮煙防火戸)」とします。


階段室を区画するということは、踊り場までも含めて囲む事になり、空間は多めに使用する事になります。
だから、マンションでは防火区画が不要な外階段が多いのです。


しかし、この規定でも、小規模な建物(各階4戸程度までのマンション)では、区画不要とされるケースがあります。
その場合には、内階段のメリットが最大限に活かされる事となり、外階段では作り得なかったプランを実現出来る場合があります。


当社では、内階段を採用し、外階段プランより遥かに収支を改善させたプランをこれまでいくつも実現しています。


内階段は屋内に作られるため、外階段・外廊下に比べ、
共用部分が劣化しにくく、維持費の面でも有利になります。
また、吹きさらしでない為、高級なイメージも造り易い事がメリットと
なります。

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